ちょっとまとまった夏休みがとれたので、初日に近所の図書館に駆け込んだ。
目当ては気の張らない三文翻訳ミステリだ。くたびれた文庫の本棚の二三百の本の前でしばし、呆然とする。が、たいていは五六年かけて読んだものばかり。すでに読んだ本でも、読んだことがあるのを忘れて借り、失望することが多いので、要注意。本を選んでいると、終いには頭痛と腹痛に襲われる。
結局六冊を選んだ。
キャロリン・G・ハート『死の散歩道』:昔読んだような気がするが、ほとんど忘れているので、読書に影響なし。単なる暇つぶし。
キャロリン・G・ハート『手紙と秘密』:まあまあ。単なる暇つぶし。
クレイグ・スミス『レディ・スティンガー』:クレイグ・ライスと間違えた。が面白かった。ウエットでないのがいい。
ジョージ・ハラ『悩み多き哲学者の災難』:インテリぶったところが、ちょっといやみ。まあ面白い。
I・マキューアン『愛の続き』:面白くなさそうだったので、最後に回したが、やっぱり面白くなかった。気取りすぎ。
とっても面白かったのは、ケン・ブルーウン『酔いどれに悪人なし』だ。
夏休みの収穫はこれだ。勝手に事件が起きて、勝手に進行し、勝手に解決されちゃう。元警官の私立探偵がアル中を克服する。さまざまな本からのたくさんの引用。たっぷりのユーモア、悪人が死に、善人も死に、残された探偵は長年の夢だったロンドンに行く。