2010年5月27日木曜日

「崩壊の後」X-Patriate

http://x-patriate.com/?page_id=13

「After the Fall」という歌がある。X-Patriate の歌だ。

X-Patriate は Alan J. Lipman が詩を書き、曲を作り、歌い、楽器を演奏している、いわば一人バンドだ。
Alan も変わっていて、本職はボストンで開業する精神科医だ。

それはともかく、「After the Fall」が絶望の歌だというのに、つい最近気づいた。
ずっと秋の歌だと思っていた。なにしろ「the Fall」だから。
バックはきれいなピアノ、切ないハーモニカ、不安な霧のような音。

ところでやはり、「After the Fall」は訳してみると絶望の歌であるのがわかった。
タイトルの「After the Fall」は「崩壊の後」と訳してみた。

「絶望」というのを見たことがあるだろうか。私は見た。体験ではなく見たのだ。
何年も前のことだ。役所の裏の食堂に座っていた女性は、目を見開き、ただ呆然と座っていた。
涙もなく叫びもなく、絶望が彼女に取り付いていた、としか言いようがない。

私は五分間くらい彼女を眺めた。
それ以前にも会ったことのない、それ以降も二度と会わなかった、名前も知らない女性だ。
彼女の絶望は、私がそれまで知っていた絶望のどれとも似ていなかった。
本物の絶望だった。

「After the Fall」に戻ろう。

何が崩壊したのだろうか。2001年の貿易センタービルか、あるいは1989年のベルリンの壁か。

トロイ陥落後のカサンドラのように、街をさまよう「彼女」は誰か。
なぜ、彼女は気が狂ったのか。「崩壊」で誰かを亡くしたのか。
子供か、夫か、両親か、兄弟か、それともそれらすべてか。

絶望に名前をつけることはできない。説明することもできない。
絶望は「彼女」だ。

----------------------Belows are translation of After the Fall

崩壊の後、
彼女は穴倉に降り、床で寝た
しばらくの間
終局の後

彼女は嘘付きで
ずるかった

壁が崩れ落ちて後
彼女は気が狂った
彼らは彼女の純粋な脳を
偽りの思想でめちゃくちゃにした

彼女は
彼女の壁に滑り込もうとする
褐色と灰色の思想が撒き散らされた
街をさまよった

そして昼間はずっと
彼女は言っただろう
「おやおや」

そして夜中ずっと
彼らは彼女に
やさしく歌っただろう

そしてその夜ずっと
頭を打ち付けたかった

彼女が簡単に
あまりにも簡単に
言ったことを
忘れようとして

崩壊の後
壁はすぐに立ちはだかった

誰もが言った
彼女はやさしい
彼女は冷静だ

そして学校は
彼女が本当に必要としているもの
ではなかった

単なるまぬけ

単なるまぬけが
彼女の困惑した心を
楽にしてくれただろうに

単なるまぬけが
彼女の困惑した性質を
楽にしてくれただろうに

単なるまぬけが
彼女がけっして見つけることのない
ものだっただろう

おやまあ

Translated by Naoko Yamakata

After The Fall
From "The Sounds Are Filtering Into The Heats" (One Such 1096)
Music, Lyrics, Instruments, Vocals by Alan J. Lipman
Copyright 2008-10
Alan J. Lipman/X-Patriate Music
All Rights Reserved