2009年8月16日日曜日

父の写真

父が立っているのは第二次大戦中の南方の小さな(多分)島である。大きな黒トラの猫を抱いて、口元だけ笑っている。穏やかな表情で、とても戦争中とは思えない。飾りのない地味な帽子に、半そでシャツ。

この写真は、十数年前、火事にあったとき焼けてしまった。そのころでさえ、セピア色に退色し、ふちが少し欠けていたから、もし、今焼けずに残っていたとしても、ぼろぼろだろう。

もう一枚は、想像上の写真。

黒いオープンカーに乗り、ハンドルに手をかけて笑っている。後部座席には、ドイツシェパードが二頭、陽気に笑っている。かれらはこれからレストランに食事をしに行くところだ。こちらは、もう少し大きな島にいたときだろう。

父は海軍のパイロットだった。戦争中の話を酔っ払ってよくしたが、戦闘の話ではなく、猫や犬たちの話だ。今となっては、それでよかったのだと思う。

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