父が立っているのは第二次大戦中の南方の小さな(多分)島である。大きな黒トラの猫を抱いて、口元だけ笑っている。穏やかな表情で、とても戦争中とは思えない。飾りのない地味な帽子に、半そでシャツ。
この写真は、十数年前、火事にあったとき焼けてしまった。そのころでさえ、セピア色に退色し、ふちが少し欠けていたから、もし、今焼けずに残っていたとしても、ぼろぼろだろう。
もう一枚は、想像上の写真。
黒いオープンカーに乗り、ハンドルに手をかけて笑っている。後部座席には、ドイツシェパードが二頭、陽気に笑っている。かれらはこれからレストランに食事をしに行くところだ。こちらは、もう少し大きな島にいたときだろう。
父は海軍のパイロットだった。戦争中の話を酔っ払ってよくしたが、戦闘の話ではなく、猫や犬たちの話だ。今となっては、それでよかったのだと思う。
2009年8月16日日曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿