黄一郎に初めてあったのは、2004年の春ころだっただろうか。
それまで、自転車置き場の大猫サンクチュアリでしか給食していなかったが、夫が、小学校の門の辺りにかわいい猫がたくさんいるみたいだ、と言ったので、行ってみた。
黄一郎は山吹色の美しい縞の、一歳に満たない雄猫だった。耳に去勢済みの印のピアスをはめていた。育ての親のマリと暮らしていたが、10月にトミーが登場してからは三頭の家族になった。
コゼットが登場するのは2005年5月だ。そのころはマリはもういなかった。コゼットは黄一郎にとっては家族ではなかったのだろうか。コゼットを追い掛け回すのを何度か見た。近くでトミーが心配そうに見ていた。しかし、ときどき追い掛け回すくらいでそれ以上の意地悪はしなかった。
金茶が現れてコゼットのいなくなる2012年3月まで、なんとなく、小猫サンクチュアリは黄一郎が中心だった。
2007年の秋から冬にかけて、ぜんぜん見かけなくなったので、心配していたが、数十メートル離れた殺風景な二階建てアパートの砂利時期の前庭にトミーと二頭でいるのを見かけて安心したことがある。それからまた、2013年の9月まで、小猫サンクチュアリに行くと、必ずと言っていいくらい、黄一郎がいた。
2012年ころから、黄一郎の毛が薄くなり始めた。汚い毛が全部落ちて、やわらかいがあまり防寒には役に立ちそうにないふわふわの毛になった。2012年の冬は越せないかもしれないと思っていたので、冬を越し、2013年の春にも元気だったので、うれしかった。
だが、2013年の9月から、さっぱり姿を消した。
黄一郎は、人間の私たちには愛想のいい猫だった。病気で苦しそうだったり、不機嫌だったりだったことは一度もない。
寒い冬は特にひざに乗るのが好きだった。最後の二三年は、夏の暑いときもひざに乗ってきた。体温が落ちていたのかもしれない。
九年の歳月、小猫サンクチュアリの黄一郎の周りは、黄金色の毛皮で明るく照らされていた。