2014年6月21日土曜日

猫サンクチュアリ年代記 12:不機嫌なゴロー


ゴローはいつも不機嫌だった。そして、ゴローには秘密があった。

ゴローはすでに大人になってから現れた。2歳前後たったと思う。細い微妙な黒縞柄で、顔から首、胸とおなかは真っ白の、結構素敵な外見だった。

2004年から2005年の8月ころまで、猫サンクチュアリでご飯を食べていたが、あまりにほかの猫とうまくいかなかったせいか、よそでご飯をもらったりしていたが、そのうち、ほかのコロニーに移ってしまった。

猫サンクチュアリでうまくいかなかったのは、ゴローがいつも不機嫌だったからだ。ほかの猫とうまくやろうという気持ちが全然なかったようだ。

私たちに対しても、常に不機嫌で、気に入らないことがあると、すぐに猫パンチを繰り出した。

ゴローは、夕方5時になると、給食の時間であっても、いなくなった。後で気づいたが、誰かを待っているかのように、地下鉄の入り口に座っていた。

本当に誰かを待っていたのかもしれない。彼を捨てた飼い主が、また戻ってきて家につれて帰ってくるのをずーっと待っていたのかもしれない。待っても待っても飼い主は現れず、そのせいでいつも不機嫌だったのかもしれない。悲しみで胸が張り裂けそうで、それが不機嫌に見えたのかもしれない。

ゴローは、猫サンクチュアリでご飯をもらいながら、地下鉄の入り口にあるケーキ屋に入り込もうとした時期がある。台風の日とか、冬の寒い日とか、何気なく自動ドアからさっと入り込み、隅に隠れるのだが、見つかって追い出されたのを、何回か目撃した。

店の裏にゴロー専用のダンボールが置いてあるらしかったが、それは気に入らなかったようだ。

夏の暑い日は、公衆電話ボックスもゴローの昼寝の場所になった。

最後は、ケーキ屋から少し離れた、トラックの駐車場にいたらしかったが、そこで交通事故にあった。トラックにひかれたのだ。しばらくしてから、ケーキ屋の店主に聞いた。

ゴローはまだ若く、運動神経も衰えていなかったから、事故で死んだとは思えない。飼い主を待っているのがいやになったのかもしれない。


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